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福岡県糸島市でカキ養殖とカキ小屋を営む株式会社アクアグローバルフーズの取組を取材しました。同社は海を守るための活動やカキ殻の活用など、環境保全に積極的に取り組んでいます。福岡県第3期SDGs登録事業者として、廃棄物の徹底削減やカキ殻リサイクルなど、持続可能な事業展開を実践しており、50年先、100年先の海を守るための取り組みが注目されています。
株式会社アクアグローバルフーズは1998年に創業され、現在54名の従業員(パート・アルバイト含む)が働いています。糸島市志摩新町の新町漁港事務所を拠点として、海面養殖業、海産物輸出入、卸売、そして飲食店「カキ小屋豊久丸」を運営しています。
代表取締役の上野慎一郎さんは、27歳で会社を設立してから15年以上にわたってカキ養殖事業を続けてきました。幼少期から海とともに育ち、カキ養殖を通じて海の環境に敏感になったことが、現在の環境保全活動の原点となっています。
株式会社アクアグローバルフーズが環境保全に取り組む理由は、シンプルながら強い信念に基づいています。カキ養殖は海の環境に直結した事業であり、水産物の育成は経営に大きな影響を与えます。汚れた海で育ったカキを消費者が食べたいと思うでしょうか、という問いかけが、すべての活動の基盤となっています。
上野社長は「ずっときれいな海で過ごしたい」という思いを、事業を始めてから一貫して持ち続けてきました。この姿勢が、社内全体に環境保全の文化を根付かせ、廃棄物を出さないための工夫へと発展していったのです。
同社の環境保全活動の特徴は、廃棄物を「出さない」ことに重点を置いている点です。社内では裏紙の再利用といった基本的な無駄削減から始まり、事業全体で再利用の仕組みが構築されています。
カキの納品や仕入れに使う発泡スチロール容器は、消毒して繰り返し使用されます。養殖に使うプラスチックパイプや針金、鉄くずなども分別・回収され、生産者や業者に戻して再利用されています。イカダのフロートはカバーを付け替えることで、中身の発泡スチロール部分は何度も使用可能です。木材も組み替えて活用され、新たな伐採を減らす取り組みが行われています。
春日市にある自社の出荷センターでも、発泡スチロールや保冷剤など再利用できる資材はすべて再利用する仕組みが導入されています。分別ルールを掲示し、従員全員で共有することで、組織全体での実践が可能になっています。
カキ小屋「豊久丸」では、陶器やガラスの食器を使用しています。コロナ禍の時期は感染対策で使い捨て製品に切り替えましたが、落ち着いてから徐々に元に戻しました。洗浄の手間は増えますが、ゴミを出すことが無駄だという信念から、陶製食器の使用を継続しています。
従業員も同社の方針を理解しており、「紙のほうがいい」という声は現在ありません。毎朝の朝礼では5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を唱和することで、環境配慮が自然と習慣化しています。
糸島のカキ殻は全量がシーライムという肥料として再利用されています。これは糸島漁業協同組合が糸島農業協同組合やJA糸島、大坪GSI株式会社と契約を結んで実現した、地域全体での取り組みです。株式会社アクアグローバルフーズも組合員として、このプロジェクトに参加しています。
元々カキ殻は燃えるゴミとして処理されていましたが、それを資源として肥料に活用するという発想で始まりました。カキ小屋では客席にカキ殻用とその他のゴミ用の2種類のバケツを設置し、お客様に分別をお願いしています。分別されたカキ殻は事業者が糸島漁協の集積所へ運搬し、大坪GSIが回収・加工して肥料としてJA糸島へ納入する仕組みが構築されています。
年間およそ600トン、糸島市内のカキ小屋から出るカキ殻の約7割が活用されており、この循環型システムは全国的にも好事例として注目されています。
カキ殻の活用は肥料化だけにとどまりません。九州大学建築系研究院の研究と、福岡で資材を製造している福岡ILB株式会社との共同プロジェクトにおいて、カキ殻を建築資材として活用する取り組みが進められています。
カキ殻を粉砕してコンクリートに混ぜて加工し、ブロックにして建築資材にするというプロジェクトの内容は、九州大学の建築研究教育センターが出版した「建築で循環をデザインする」という書籍に掲載されました。さらに別の企業からはカキ殻を漆喰にしたいという提案も受けており、カキ殻の多様な再利用可能性が広がっています。
廃棄物を「出さない」という取り組みを浸透させることは、最初は大変でした。発泡スチロールやフロート、養殖資材、木材などを再利用するためには、洗浄や分別の手間が増えるためです。当初は「洗うのが手間」「捨ててしまった方が早い」という声もありました。
しかし出荷センターの責任者が「捨てない、使えるものは使う」と伝え続けることで、意識が変わっていきました。ゴミを出すことを前提に考えるのではなく、最初から「出さないためにどうするか」を考える。その意識の転換が、現在の「捨てない、無駄にしない」という文化を根付かせたのです。
周囲の漁業者への働きかけにおいても、言葉で説得するより実際にやってみせることが最も効果的であることが実証されています。自社がイカダの木材を組み替えて再利用し始めたら、それを見た周りも同じように始めました。養殖資材の再利用も同様にして広がっていきました。時間はかかりますが、1年や2年ではなく継続することで、周囲も認めてくれるようになり、一緒に取り組んでくれるようになります。
上野社長は所属している福岡県漁協青壮年協議会の会長として活動しており、毎年7月を「クリーンアップ月間」と定めて、漁場・漁港の清掃活動を実施しています。同協議会は2024年に設立60周年を迎え、「守り受け継ぐ福岡の海」をスローガンに掲げています。
環境保全と持続可能な漁業を目指して、様々な活動に取り組んでいます。こうした地域全体での取り組みが、糸島の海を守り続けるための重要な活動となっています。
株式会社アクアグローバルフーズは、海の環境保全活動を行っている一般社団法人ふくおかFUNと連携して取り組みを進めています。ふくおかFUNはアマモ場の保全・再生活動に力を入れています。
アマモは「海のゆりかご」と呼ばれる海草で、魚の産卵場所や稚魚の生育場所として欠かせない存在です。また、大気中の二酸化炭素を吸収する海の生態系「ブルーカーボン生態系」の一つとして注目されています。
同社も協議会としてブルーカーボン生態系の保全推進を軸に、アマモの植え付けや海岸の清掃活動、イベント開催などを通じた活動を行っています。特にマイクロプラスチック問題には関心を持っており、啓蒙活動や海岸清掃でも細かいプラスチックごみの回収に力を入れています。
同社の環境保全活動を続ける中で、最もうれしいことは「豊久丸のカキがおいしい」「海がめちゃくちゃきれいですね」と言ってもらえることだと上野社長は語ります。イカダが浮いている沖合までは、糸島に住んでいる人もあまり見ることがないかもしれません。冬場の沖合は水深7、8メートルでも底まで見えるほど澄んでいるのです。
このきれいな海を、これからもずっと守り続けたいという思いが、すべての活動の根底にあります。
株式会社アクアグローバルフーズは、今後もゴミを出さない取り組みを継続し、「全体のバランス」と「うまいサイクル」を大事にしていく方針です。
「全体のバランス」とは、環境保全と事業の持続性のバランスを指しています。環境も従業員も負荷がかかりすぎると持続できなくなってしまいます。全体のバランスを取り、海を守りながら事業も続けて両立させることが重要です。
「うまいサイクル」とは、全体のバランスを保つために無理なく回し続けられるサイクルのことです。リサイクルを活用すればコスト削減になるし、廃棄物も減り、環境にも優しくなります。従業員に関しても一人に負荷をかけないよう作業を分担し交代させています。このような好循環を回し続けることを大切にしていく方針です。
上野社長は、糸島の海を50年先、100年先もこの状態で残したいという強い思いを持っています。幼少の頃から父の仕事を見て、海の前で育ってきた経験が、この長期的なビジョンを形成しています。
甥っ子も一緒に働き始め、自分にも子どもが2人います。50年先、100年先の環境を後世に伝えていくことが、今を生きる世代の責任だと考えています。下水道や浄化槽の普及により、海は昔よりきれいになりましたが、海面上昇や温暖化は実感できる課題です。2025年は海水温の変化でカキの産卵が1ヶ月遅れるなど、気候変動の影響が直接的に事業に表れています。
糸島市のカキ殻リサイクルは全国的にも好事例として注目されています。2026年3月には、全国漁業協同組合連合会の集まりで糸島の事例が発表される予定です。こうした活動が全国に広がることで、海を守る取り組みが日本全体に波及することを期待しています。
1人の力は微々たるものですが、少しずつでもやっていって、その輪を広げていく。それが、未来の世代に海を残すために、今できることだと上野社長は考えています。
株式会社アクアグローバルフーズの取組を取材した記事は、2026年2月16日に更新されました。同社の環境保全活動やカキ小屋の運営について詳しく知りたい場合は、直接企業に問い合わせることができます。
株式会社アクアグローバルフーズの所在地は福岡県糸島市志摩新町549(新町漁港事務所)です。カキ小屋「豊久丸」を訪れることで、同社の環境保全への取り組みを直接体験することができます。
糸島市は福岡県の西部に位置し、自然豊かな地域として知られています。同社のカキ小屋では、澄んだ糸島の海で育ったおいしいカキを食べながら、環境保全への思いを感じることができます。
糸島市役所経営戦略部企画秘書課では、SDGs未来都市に関する取り組みについての問い合わせを受け付けています。
電話番号:092-332-2111(代表)
秘書係:092-332-2111
企画調整係:092-332-2061
ファクス番号:092-323-2344
窓口の場所は糸島市役所4階です。受付時間は月曜日から金曜日の8時30分から17時15分(祝日を除く)です。
株式会社アクアグローバルフーズの取組を取材した記事は、海を守るための実践的で継続的な環境保全活動の重要性を示しています。同社は廃棄物を「出さない」ための徹底した工夫、カキ殻の循環型リサイクルシステム、そして地域全体での海の環境保全活動を通じて、持続可能な事業展開を実現しています。
カキ養殖という事業を通じて、海とともに歩む中で育まれた環境への思いが、社内全体に根付き、周囲の漁業者にも波及しています。福岡県第3期SDGs登録事業者として認定された同社の取り組みは、50年先、100年先の海を守るための模範となるものです。
糸島の海を守り続けるための挑戦は、単なる企業活動ではなく、次世代に美しい海を残すための社会的責任の実践です。カキ小屋「豊久丸」を訪れることで、このような環境保全への思いを直接体験することができます。2026年3月には全国漁業協同組合連合会でも発表予定の、糸島のカキ殻リサイクル事例に代表される同社の取り組みは、今後ますます注目されるでしょう。