広島県広島市安佐南区相田にある正伝寺は、歴史的に重要な寺院です。この寺院は、慶長11年(1606)以前には相伝坊(しょうでんぼう)と称していたと伝えられています。境内には、雄株のクロガネモチが目立っており、樹高16.5m、胸高幹囲3.4mの巨木です。この木は、全国的に見ても指折りの巨樹と言えるもので、樹齢ははっきりしませんが、豊臣秀吉が朝鮮を侵略した時に従軍した福島正則が苗木を持ちかえって植えたものとされています。
寺院自体も、鎌倉時代に創建されたと伝えられています。境内には、重要文化財に指定された本堂があり、承応2年(1652)に伏見城から移築されたものです。堂内には、血天井や狩野山楽作の襖絵も残っています。また、江戸初期に作庭園された枯山水庭園もあり、サツキの刈り込みが7・5・3に配され、「獅子の児渡し庭園」とも呼ばれています。
この寺院は、歴代の藩主がたびたび訪れた記録が残っています。四代藩主綱長(治世1673〜1708)がこの寺を訪れて描いた写生図も残っており、クロガネモチも描かれています。この絵を見ていると、数百年の時を隔てて同じ木を眺める不思議さと、長い時間を生きてきたこの木の生命力をあらためて感じさせられます。
広島県広島市安佐南区相田4丁目4-15